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前回の「プログラム・デザインのイメージ図」を具体的な例を挙げてより実践的に示していきます。

プログラムデザインの具体例

一週間のサイクル

下記で挙げた例は、土曜日に試合があり、その後の4日間のトレーニングで次のゲームに向かう場合のトレーニング内容です(多くのプロ・チームが採用)。

program_design02

※日曜日が試合の場合は1日ずれます

トレーニング期間・前半

立ち上げ日と二日目はゲームまでの時間が確保出来るため、サッカーに必要な要素のうち、以下に該当するものを週の前半に実施します。

『回復に時間がかかる要素のトレーニング』
『局面の勝敗を左右するスピードとは対極にある要素のトレーニング』

立ち上げ日

(3) アジリティ
60~70%のスピードで正しい動きを確認し、習慣化する。5分アジリティ
バランス

トレーニング内容 時間 意図する要素
(1) 有酸素ランニング
感覚的に「楽からずキツからず」のスピード。
※ LT(乳酸が溜まり始めるポイント)付近の強度。
15~20分 有酸素
(2) 体幹&補強 10~15分 筋力、バランス
(4) 技術&戦術
パス&コントロール、ポゼッション
10~15分 有酸素
乳酸
(5) 戦術
スモールコート・ゲーム
(6対6~8対8)
6~8分
2~4セット
複合
(6) ジョギング 15~20分 有酸素
(7) ストレッチング 10分 トリートメント
(8) ウェイト・トレーニング (レギュラー組のみ) 20~30分 筋力

2日目

トレーニング内容 時間 意図する要素
(1) ボールを使ったウォーミング・アップ → ストレッチ 15分
(2) ポゼッション 10~15分 乳酸、アジリティ
(3) 戦術的トレーニング 20~30分 複合
(4) 紅白戦 (10対10+2GK) 10~15分
2~3セット
複合
(5) ジョギング 10~15分 有酸素
(6) ストレッチング 10分 トリートメント
(7) ウェイト・トレーニング (サブ組) 20~30分 筋力

トレーニング期間・後半

前2日間でかかった負荷の超回復を狙いながら、試合に向けて『スピード』の要素に取り組んでいきます。

内容としては、動きのスピードを上げつつも、疲労が残らないようにトレーニングの量をコントロールして取り組みます。

前々日

トレーニング内容 時間 意図する要素
(1) コーディネーション&ダイナミック・ストレッチ 5分
(2) ボール・フィーリング (技術トレーニング) 10分
(3) ポゼッション 5~10分 アジリティ
(4) アジリティ
80~90%のスピードで5~7秒×4~8本
5分 アジリティ
スピード
(5) 戦術トレーニング (10対10+2GK)
プレーの連続性をコントロールして量的な負荷は抑える
20~30分 複合
(6) 対人トレーニング(1対1~3対3)
または、スモールコート・ゲーム(4対4~6対6)
(スタメン予想以外の選手)
15~20分 乳酸
アジリティ
スピード
複合
(7) ジョギング 10~15分 有酸素
(8) ストレッチング 10分 トリートメント

前日

トレーニング内容 時間 意図する要素
(1) コーディネーション&ダイナミック・ストレッチ 5分
(2) アジリティ 5分 アジリティ、スピード
(3) 戦術の確認 → セットプレー 20~30分 複合
(4) ジャンプ&スプリント
3~4秒×3~6本
3分 スピード
(5) スモールコート・ゲーム(4対4~6対6)
または、テクニカル・トレーニング
[ex.クロス~シュート、コンビネーション~シュート]
(サブ組のみ)
3~5分
2~4セット
複合
(6) ジョギング 10分 有酸素
(7) ストレッチング 10分 トリートメント

プログラムデザインにおける指導者の役割

このようにゲームからゲームまでの間にサッカーに必要な要素のトレーニングをタイミングよく実践し、ゲームに臨みます。

「ゲームのパフォーマンスがどうだったのか」「様々な要素が絡み合うゲームのパフォーマンスをどのように観るのか」という評価をして「自分たちのチームに対してどの様にトレーニングをオーガナイズしていくのか」を考える必要があります。

「ゲームのパフォーマンスを分析し、プログラム・デザインに反映させる」
これこそが指導者の大きな役割であり、腕の見せ所の一つと言えます。

トレーニング強度の把握

ゲーム分析における一つの観点として運動量があります。
これについては、第1章3部「運動量の評価」にて「◎考察・運動量をどう捉えるか?「運動量が多い=◎」ではない?」という観点で論じています。

それとは別の視点からもう一つ、トレーニングの強度を把握していくためにどのような判断基準を持つべきでしょうか。

一つはトレーニング内容による区別が考えられます。
例えば、有酸素的なトレーニングと乳酸系のトレーニングの区別、乳酸系とスピード系の区別などです。

こういったトレーニングにおいて、強度を把握する指標の一つとして「心拍数」が挙げられます。
しかし、心拍数には元々個人差があります。

同じ選手に対して、トレーニングの負荷や状態を把握するための相対的な指標とする場合は良いですが、チーム全体に対して心拍数を絶対的な指標にしてトレーニングを実施することは、負荷のばらつきを生む原因になってしまいます。

「乳酸が溜まり始める速度」「呼気の酸素と二酸化炭素の割合が入れ替わる速度」「乳酸が一気に蓄積し始める速度」は選手毎に違います。
また、選手ごとにポイントとなる心拍数も異なります。

例えば「有酸素的な負荷をかけたいから心拍数は140拍/分で」と設定しても、140拍/分のポイントは人によって違うため、かかる負荷も異なってきます。また、同じ人が同じ負荷で運動してもコンディションにより心拍数は変化します。

では、何を基準にすればよいのでしょうか?

それは、その人が感じる「感覚」なのです。

主観的な強度を判断基準にすると、トレーニングにおいて狙いとしたゾーンに入れ易くなります。

※ここでのゾーンとは強度による「有酸素系」「乳酸系」といったトレーニングの区分けを指します

主観的な強度の判断基準

グンナー・ボルグ氏によって考案された「主観的運動強度」というものがありますが、それを現場で使いやすいように段階分けをしてみると以下のようになります。

感覚 ターゲット・ゾーン
1
2 楽だけど息が弾む 有酸素系
3 楽ではないがきつくもない 有酸素系
4 きつくて呼吸が乱れ始める 有酸素系~乳酸系
5 きつくて脚の張りを感じる 乳酸系
6 きつくて脚がパンパン 乳酸系
7 動くスピードは速いが疲れはしない スピード ※

※スピード系のトレーニングはフレッシュな状態から疲れるまでは行わない。
疲れて遅くなっている状態でトレーニングをしてもスピードアップには繋がらない。

この表で示した指標は主観的な感覚強度ですが、客観的にも観察しやすい分類の仕方と言えます。

つまり、観察によって個人やグループに対し、かかっている負荷の強度がどの位であるかを見て取ることができます。

心拍数でトレーニングを管理しようとする方法は、科学的な部分もありますが、扱い方を間違えると非科学的になってしまう可能性があります。

逆に数字で表すことはできませんが「主観的強度の感覚」を判断基準として「客観的に観る」方法は、充分に科学的な手法であると思っています。

育成年代に対してのプログラム・デザイン

育成年代に対しては、発達曲線を念頭に置いたプログラム・デザインが必要であり、伸びる要素(※1)に対してトレーニングのボリュームを増やして取り組むことが求められます。
※1 年代別の伸びる要素

age1

次項では動き作りや運動の多様性が効果的なジュニア年代を例にして解説します。

例えば、動き作りや運動の多様性が効果的なジュニア年代の場合、1週間のプログラム・デザインはこのような内容が考えられます。

age2

このような1週間の過ごし方が、ジュニア年代の能力を伸ばしていく上では効果的であると考えます。

ある特定の種目でのパフォーマンスを上げたくて、その種目のみに日々取り組みがちですが、ジュニア世代=ゴールデン・エイジが持っている大きな潜在能力を見逃さず、多様性に応じたトレーニングをすることが大切です。

「プログラムのデザイン」とは、あらゆる世代において
「選手が持っている能力を最大限に生かすための考え方」なのです。

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