「運動量」について語られる時、「運動量が多くていいゲームだった」「相手よりよく走って頑張った」などの話をよく耳にします。
量的なものを、どのように捉えるべきなのかということを、エネルギー供給経路とは別の観点から見ていきます。
次のデータは、前回のワールドカップのチーム別の平均移動距離と攻守に分けた形での内訳(ボールを保持している状況=攻撃、相手がボールを保持している状況=守備)を示したものです。
※興味深いデータなので全チーム載せてみました。
表2. 2010ワールドカップ 南アフリカ大会における移動距離、及びスピード(全チーム・攻守別内訳)
この表を見てもらえればわかるように、運動量が多いこと=良い成績&パフォーマンスとは限らない、ということが見てとれます。
一つの例として、日本と優勝国のスペインを比較して見てみます。
表3. 日本とスペイン(優勝国)の比較
優勝国のスペインよりも日本の方が運動量では優っています。
しかし、「ボールを保持=攻撃している」か「相手がボールを保持=守備している」か、つまり攻守の比重は大きく異なっています。
それ自体が良い悪いではなく、運動量はチームのスタイル、ゲーム・プラン、対戦相手との力関係によって左右されるものであるということです。
例えば、積極的な攻撃、積極的なプレッシングを行えば運動量は増えます。
また、守備に翻弄されたり、無駄な動きやミスが多かったりした場合も運動量は増えます。
このように、ゲームにおける移動距離は、様々な要因の影響を受けるということです。
重要なことは、実践したい戦術や戦略、対戦相手との力関係の中で「どのタイミングで、どのポジションに、どのように、どの位のスピードで動き、走るか」ということです。
量的な評価をする場合、目指すチーム戦術やプレーに対して「動くべき時に動けているのか」という観点で運動量を捉えていく必要があります。
そして、現状をしっかりと分析した上で、トレーニングに繋げていくことが大切です。
「動くべき時に動けていない」という時、理由には幾つかのケースがあります。
まずは動くべき時はわかっているが「疲れていて動けない」、「動かなくても大丈夫だろうと油断して力を抜いてしまう」といったケース。
次に「動くべき時がわかっていなくて動けない」といったケース。
特に後者の場合は「どこにどう動くか」という戦術的な理解がなければ、脳からの指令が出ないので身体は動きません。
つまり、いくら体力面を強化しても試合で動けるようにはなりません。
更には、体力面を強化しようと競技の特性から外れた走り込みなどを行ってしまえば、求めるパフォーマンスから遠ざかるだけでなく、疲労も重なって益々動けなくなってしまいます。
後者のケースの場合は、戦術的に判断を伴ったトレーニングをすることにより、動くべき時に動けるようにしていかなければなりません。
前者の「疲れて動けない」場合も、負荷をかけるタイミングでのトレーニングが足りなかったからなのか、トレーニング量が多すぎて疲労を残して試合日を至ったのかで大きく異なります。
特に、陥りやすいケースとして、試合前日、前々日の超回復期のトレーニング内容、食事や休養、トリートメントといった個人の自己管理能力の欠如により、疲労を残ししたまま試合日を迎えている場合があります。
この場合、動けないからと更にトレーニング量を増やして、益々動けなくなってしまったり、過負荷で怪我に至ったりしないように注意しなければなりません。
このように運動量を評価する場合には「動くべき時に動けていない」理由をしっかりと分析することが非常に重要になるのです。
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